日本はチベットから多くのことを学ぶことができる。優れた精神文化や深い歴史からだけではなく、中国に支配された経緯と命がけの抵抗運動から、我々が多くのことを学ぶべきだ。チベットが自由になるということは、日本が自由になるということだ。――このサイトの趣旨にご賛同いただける方は、サイト内の文章をご自由にご利用ください
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以下は、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所発行の「チベット半世紀の苦難-3月10日『チベット蜂起記念日』特集」に掲載された、チベット人青年の手記(2008年5月18日付)の抜粋である。
(7月のチベットを救え!アジアパシフィックフォーラムのときにタダでもらったもの)
(3月、)100人ほどの兵士が私の家に乱入してきた。5つのドアを壊し、あらゆる物を物色した。投げ捨てられた物が床に散乱した。彼らはそこに居合わせた人間を誰彼構わず殴った。彼らは小銃を構えていて、とても乱暴だった。私は逮捕され、両手の親指を後ろ手に固く縛られて連行された。余りひどくきつく縛られたせいで、未だに周囲が麻痺している。
頭を何度も殴られ、殺されるのかと思った。骨が折れても不思議ではないくらい殴られた。しかし彼らは私を殺さずに、収容所に連行した。
1日に与えられた食べ物は蒸した饅頭半分のみ。投獄されていた誰もが水を欲しがり、多くの者が自分の小水で渇きをしのいだ。
衣類も毛布も寝具も何もなかった。コンクリートの床があるだけだった。とても寒かった。
本当にひどかった。ひどい話をたくさん聞いた。腕や足の骨を折られたり、発砲され負傷したものが大勢いた。まったく恐ろしい光景だ。21世紀に生きているとはとても思えない。銃で4回も撃たれた少年がいた。肋骨を折られた人もいた。一人の男性は右目を殴られて内出血して顔が腫れ上がっていた。とにかくひどいんだ。歯を折られたり、ほかにもいろいろだ。本当に恐ろしい目にあったんだ。
食べ物がなかったのはつらかった。ひどい空腹のために人がばたばた倒れた。
私は直接見たわけではないが、トゥルンでは数人の僧侶の頭に布袋が被されていた、と友人らが言っていた。僧侶たちはどこかに連行されたまま戻ってはこなかった。殺されてしまったのかもしれない。
私が会った65才の男性は肋骨を2本折られていて上半身が曲がった状態でうずくまっていた。まっすぐに出来ないんだ。瀕死の状態だった。
ある姉弟は、突然寝ているところを兵士たちに襲われた。兵士はまるで物みたいに彼らを窓から建物の外に放り投げたんだ。弟の方は即死だった。姉は死ななかった。横たわる彼女に兵士らは座ることを強要した。弟の遺体はどこかに移され、姉はこの出来事を口外するなと命令された。これらはほんの一例で、こんな話がいっぱいあるんだ。
何もしていない人たちも尋問を受けた。何もしていなくてもチベット人であるというだけで有罪になった。未だに居所のわからない者が大勢いる。
真新しいジャケットを身につけた男性がいたが、彼はジャケットを剥ぎ取られて殴り殺された。このジャケットは盗んだに違いない、と言われて。そうなんだ、新品のジャケットを着ていたために、彼は殺されたんだ。
高校生も大勢いた。17才の学生は3月14日の抗議行動には参加していなかったが、拷問を受けた。彼は服を脱がされ手を縛られて、荷車で轢かれた。ありとあらゆる拷問がある。後で彼が言っていたが、やってもいないことを強制的に自白させられたらしい。多くの人がそうやって、嘘の自白を強要されるんだ。収容所で死んだ人を目にすることはなかったが、「死人が出た」と公安や兵士が叫ぶ声を毎日聞いた。
ある日「何人ぐらいチベット人が逮捕されたか」という問いに対して、ある中国人が、1万人弱だろう、と答えるのを聞いた。
兵士らの僧侶の扱いは格段にひどい。デルゲ県の僧侶は指が湾曲していたうえ、片目が完全に失明していた。我々なんかよりももっとひどい拷問を受けたんだ。本当にどうして僧侶たちに、あんなにひどい仕打ちをするのかわからない。ひどすぎる。
もうこれ以上我慢は出来ない。人は寛容であるべきだが、これ以上寛容にはなれない。
我々に人権はない。ここにあるのは文化的ジェノサイドだ。
監禁されている時に何度か食べ物の夢を見て、家の食事のことを思い出した。母と姉の作る食事。匂いまで思い出した。その時、家の食事のおいしさを、本当にありがたいと思った。食事を終えて、「まあまあだったね」なんてよく言ってたけれど、本当はとてもおいしかったんだ。
こんなに残酷で悲惨な経験をしたことはなかったけれど、それでもそこから学ぶことはある。よりよい人間になることができる。
チベット人がどんどん減っていくのがとても心配だ。多くの人たちが命を落とし、そうでなければ手足を折られて不自由な体にさせられている。ひどいことだ。私がそうだったように、(今も)逮捕されて監禁されている人たちもいる。収容所に監禁されている人たちのことは、決して頭から離れない。
あのひどい状況……わずか16,17才の若者が終始泣き叫んでいるんだ。悲惨だ。
手を折られた人たち、銃弾で傷ついた人々……彼らの青白い顔……
悲しみで胸が張り裂けそうだ。
2008年5月19日
この手記が書かれた少し前に、胡錦涛が来日し、早稲田大学で卓球少女愛ちゃんと胡錦涛が楽しく卓球に興じ、それを我が国の首相が満面の笑みで暖かく見守っていた。その構図を、マスコミが大きく報じ、日中友好ムードが演出されていた時も、チベットでは、この手記に書かれているような、残酷な状況があちこちで起きていたはずだ。
愛ちゃんと胡錦涛。楽しそうですね。
北京五輪開幕直前の、テレビ局のアナウンサーやコメンテーターの、期待に声を弾ませるような調子の放送を見るたびに、今もチベットでは…と思ってしまう。
きのうの開会式はとても見る気にはなれなかったが、1時頃テレビをつけたら、まだ開会式をやっていた。このバカ騒ぎの裏側で、非人間的な行為が今も行われている。情報がなくとも、少しの想像力があれば、それは理解できるだろう。理解できれば、テレビで垂れ流されるあの浮ついた態度は、人間として恥ずかしくてできないはずだ。
今日の六本木のチベットデモは忙しくて参加しないつもりだったが、五輪の開会式をチラッと見て、ここで紹介した青年の証言を読み直し、気が変わった。それについては次回報告。
チベットの女性と子供の人権
抗議行動を行って殺されたチベット人
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(3月、)100人ほどの兵士が私の家に乱入してきた。5つのドアを壊し、あらゆる物を物色した。投げ捨てられた物が床に散乱した。彼らはそこに居合わせた人間を誰彼構わず殴った。彼らは小銃を構えていて、とても乱暴だった。私は逮捕され、両手の親指を後ろ手に固く縛られて連行された。余りひどくきつく縛られたせいで、未だに周囲が麻痺している。
頭を何度も殴られ、殺されるのかと思った。骨が折れても不思議ではないくらい殴られた。しかし彼らは私を殺さずに、収容所に連行した。
1日に与えられた食べ物は蒸した饅頭半分のみ。投獄されていた誰もが水を欲しがり、多くの者が自分の小水で渇きをしのいだ。
衣類も毛布も寝具も何もなかった。コンクリートの床があるだけだった。とても寒かった。
本当にひどかった。ひどい話をたくさん聞いた。腕や足の骨を折られたり、発砲され負傷したものが大勢いた。まったく恐ろしい光景だ。21世紀に生きているとはとても思えない。銃で4回も撃たれた少年がいた。肋骨を折られた人もいた。一人の男性は右目を殴られて内出血して顔が腫れ上がっていた。とにかくひどいんだ。歯を折られたり、ほかにもいろいろだ。本当に恐ろしい目にあったんだ。
食べ物がなかったのはつらかった。ひどい空腹のために人がばたばた倒れた。
私は直接見たわけではないが、トゥルンでは数人の僧侶の頭に布袋が被されていた、と友人らが言っていた。僧侶たちはどこかに連行されたまま戻ってはこなかった。殺されてしまったのかもしれない。
私が会った65才の男性は肋骨を2本折られていて上半身が曲がった状態でうずくまっていた。まっすぐに出来ないんだ。瀕死の状態だった。
ある姉弟は、突然寝ているところを兵士たちに襲われた。兵士はまるで物みたいに彼らを窓から建物の外に放り投げたんだ。弟の方は即死だった。姉は死ななかった。横たわる彼女に兵士らは座ることを強要した。弟の遺体はどこかに移され、姉はこの出来事を口外するなと命令された。これらはほんの一例で、こんな話がいっぱいあるんだ。
何もしていない人たちも尋問を受けた。何もしていなくてもチベット人であるというだけで有罪になった。未だに居所のわからない者が大勢いる。
真新しいジャケットを身につけた男性がいたが、彼はジャケットを剥ぎ取られて殴り殺された。このジャケットは盗んだに違いない、と言われて。そうなんだ、新品のジャケットを着ていたために、彼は殺されたんだ。
高校生も大勢いた。17才の学生は3月14日の抗議行動には参加していなかったが、拷問を受けた。彼は服を脱がされ手を縛られて、荷車で轢かれた。ありとあらゆる拷問がある。後で彼が言っていたが、やってもいないことを強制的に自白させられたらしい。多くの人がそうやって、嘘の自白を強要されるんだ。収容所で死んだ人を目にすることはなかったが、「死人が出た」と公安や兵士が叫ぶ声を毎日聞いた。
ある日「何人ぐらいチベット人が逮捕されたか」という問いに対して、ある中国人が、1万人弱だろう、と答えるのを聞いた。
兵士らの僧侶の扱いは格段にひどい。デルゲ県の僧侶は指が湾曲していたうえ、片目が完全に失明していた。我々なんかよりももっとひどい拷問を受けたんだ。本当にどうして僧侶たちに、あんなにひどい仕打ちをするのかわからない。ひどすぎる。
もうこれ以上我慢は出来ない。人は寛容であるべきだが、これ以上寛容にはなれない。
我々に人権はない。ここにあるのは文化的ジェノサイドだ。
監禁されている時に何度か食べ物の夢を見て、家の食事のことを思い出した。母と姉の作る食事。匂いまで思い出した。その時、家の食事のおいしさを、本当にありがたいと思った。食事を終えて、「まあまあだったね」なんてよく言ってたけれど、本当はとてもおいしかったんだ。
こんなに残酷で悲惨な経験をしたことはなかったけれど、それでもそこから学ぶことはある。よりよい人間になることができる。
チベット人がどんどん減っていくのがとても心配だ。多くの人たちが命を落とし、そうでなければ手足を折られて不自由な体にさせられている。ひどいことだ。私がそうだったように、(今も)逮捕されて監禁されている人たちもいる。収容所に監禁されている人たちのことは、決して頭から離れない。
あのひどい状況……わずか16,17才の若者が終始泣き叫んでいるんだ。悲惨だ。
手を折られた人たち、銃弾で傷ついた人々……彼らの青白い顔……
悲しみで胸が張り裂けそうだ。
2008年5月19日
この手記が書かれた少し前に、胡錦涛が来日し、早稲田大学で卓球少女愛ちゃんと胡錦涛が楽しく卓球に興じ、それを我が国の首相が満面の笑みで暖かく見守っていた。その構図を、マスコミが大きく報じ、日中友好ムードが演出されていた時も、チベットでは、この手記に書かれているような、残酷な状況があちこちで起きていたはずだ。
愛ちゃんと胡錦涛。楽しそうですね。
北京五輪開幕直前の、テレビ局のアナウンサーやコメンテーターの、期待に声を弾ませるような調子の放送を見るたびに、今もチベットでは…と思ってしまう。
きのうの開会式はとても見る気にはなれなかったが、1時頃テレビをつけたら、まだ開会式をやっていた。このバカ騒ぎの裏側で、非人間的な行為が今も行われている。情報がなくとも、少しの想像力があれば、それは理解できるだろう。理解できれば、テレビで垂れ流されるあの浮ついた態度は、人間として恥ずかしくてできないはずだ。
今日の六本木のチベットデモは忙しくて参加しないつもりだったが、五輪の開会式をチラッと見て、ここで紹介した青年の証言を読み直し、気が変わった。それについては次回報告。
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