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亡命ウイグル人医師アニワル・トフティ氏の講演(日本政策研究センター主催)がありました。
2008年8月7日午後6:30~8:30、都市センターホテル
以下はそのときの講演の内容の要約です。
アニワル氏は、共産党員の家庭に生まれ、育ち、成績優秀で医学系の大学に進学し、卒業後鉄道局付属病院の医師となる。
父からいつも、将来のために共産党に入党しろと言われ、渋々入党しようとしたものの、緊急の手術を要する急患が入ったため、入党審査会議に出席できなかった。アニワル氏は、理由を説明しても、書記から散々叱責された。日本ならば、人命のためなら、やむを得ない行動、というよりむしろ賞賛されるはずだが、共産主義国家では、党のことを何よりも優先しなければならないのだと言う。これは彼の運命だったのか、次回の入党審査会議のときも、同じことが起きたために、彼は共産党に入ることはなかった。
1994年、彼が勤務する鉄道局付属病院の病床は40あるが、そのうち10をウイグル人が使っていた。鉄道局の職員数は16万人で、ウイグル人はそのうち5千人。彼はなぜウイグル人の入院患者比率がそんなに高いのか、と疑問に思った。
また、その年、彼は、ウイグル全土をまわって、鉄道関係者の悪性腫瘍の診断を行った。そのときもウイグル人や30年以上ウイグルに住む漢人に、異常が多く見られた。
1994年、ある老人から興味深い話を聞いた。太陽の何千倍も明るい光が現れたのだと言う。老人は、神の怒りだと理解し、祈り続けたという。その老人の体の右半分は、ケロイド状態になっていた。
1992年、彼が手術して一命ととりとめた漢人の息子が警察官で、お礼に山に狩猟に連れて行ってくれた。そこで彼は異常に大きなネズミを目撃する。警察官の話では、この動物は、ここ数年見かけるようになったが、ハンティングしては食べていると言う。
彼はやむなく死刑囚の臓器移植に関わったことがあり、そのことで今も自分を責め続けている。会場でも、その話をしたときは、かなりつらそうだった。
ウイグル人であることで差別されたり、そのような臓器移植をやらされたりしたことで、彼はこれ以上漢人と一緒に仕事をしたくないと思い、トルコに留学する。
そのとき、イギリス人の記者が彼に接触し、彼らは東トルキスタンに潜入して取材を行い、物的証拠を英国に持ち帰り、ウイグルの核汚染の実態を明らかにした。その内容は「シルクロードの死神(Death on the Silk Road)」というドキュメンタリーとして放映される。この番組は、これまで83ものテレビ局で放映された。
アニワル氏は、1999年、英国に政治亡命し、2005年に英国国籍を取得、現在は英国で暮らし、在英ウイグル人協会会長、世界ウイグル会議イギリス全権代表を務める。
来場者の質問に、よく中国でそんな取材ができましたね、というのがあったが、アニワル氏は、007やMI6の国、英国らしい見事な手口を紹介していた。
東トルキスタンをどうしたいのか、という質問ついては、自治ではなく完全な独立を望んでいる、と回答した。
ウイグル人の武装闘争についてどう思われるか、という質問に対しては、皮肉を込めて、徹底的に教育された毛沢東の言葉「弾圧あるところに抵抗あり、抑圧あるところに反発あり」を紹介し、我々は、この言葉を誰よりも実感し、また理解していると答えた。
今回の五輪についてどう思うか、という質問には、中国が東京五輪のときに原爆実験を行ったこと、中国が五輪を開催できる国にまでなった裏には、ウイグルの大きな犠牲があること、五輪招致のときに人権擁護を約束しておきながら、まったく守っていないこと、について抗議する、と答えた。
日本に言いたいことは、という質問には、広島の惨状をこの目で見て確かめて、被害に遭われた方々を追悼したい、世界で一番原爆の悲惨さを理解している日本人に、他にも原爆で苦しんでいる人たちがいることを伝えたい、また、日本の進んだ原爆症の治療技術で東トルキスタンの人々を支援してもらいたい、と答えた。
トルコ系の民族の国家による支援の状況についての質問については、東トルキスタンに隣接する国々は、中国の金の力で完全に中国の言いなりになっていて、我々は活動できない、トルコは我々を受け入れてくれているが、活発な活動はできない、私はトルコで犯罪を犯したことはないが、中国からの圧力があったのか、入国を許可されなかった、と答えた。
このときの講演の内容のかなりの部分は、水谷尚子著「中国を追われたウイグル人-亡命者が語る政治弾圧」文春新書.2007年、にも含まれているので、そちらを参照してほしい。
また、講演の全内容は、日本政策研究センター発行の、「明日への選択」という情報誌に掲載される予定。
1980年代初め、中国における平均月収は3000円だと言われていた。もし、我が国が中国の状況を冷静に分析、判断し、中国への援助を必要最低限にとどめていれば、中国は、今のような札束外交はできず、東トルキスタンのまわりのトルコ系の国々は、もっと積極的に東トルキスタンを支援できたはずだ。そうであれば、どれだけ東トルキスタンの人たちは心強く思えたことだろう。
その意味で、我が国は、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という平和憲法の理念に反して、人権を弾圧する側に立つ国に成り下がっていると言える。
Death on the Silk Road (yout ube)
http://jp.youtube.com/watch?v=akfpO1cr_kY
http://jp.youtube.com/watch?v=vdKcoTcKbi4
http://jp.youtube.com/watch?v=E8yUDAYi9jY
ウイグル人医師が北京五輪抗議のため来日
http://www.seisaku-center.net/modules/wordpress/index.php?p=565
広島原爆忌:祈り 世代、海を越え 被害各地から参加者
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080806k0000e040057000c.html
ウイグルの原爆被害を知ってもらいたい
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080807/chn0808072104008-n1.htm
日本の反核団体、政党はチベット、ウイグル問題をどう扱っているか
(ウイグルを完全無視)
http://tibet.blog.shinobi.jp/Entry/6/
Database of nuclear tests, China-PRC
http://www.johnstonsarchive.net/nuclear/tests/PRC-ntests1.html
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(高田純の放射線防護学入門)
http://www15.ocn.ne.jp/~jungata/NEDonSilkRoadJap1.html
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ただ、最後の「平和憲法の意志に」は不要だと思いました。
理由:
・憲法は人格をもたないので意志は不適当。
・平和憲法を現実的に改憲すると現在の似非平和憲法ではなくなると九条論者からされるであろう。
・憲法がどうあれ、大切なのは人間としての基本的尊厳を相互に尊重しあうことだから。
以上。
ご指摘ありがとうございました。
最初「意志」と書いていたのですが、私の語彙不足です。すいません。しっくりこないので、後で「理念」に修正させていただきました。
>・憲法がどうあれ、大切なのは人間としての基本的尊厳を相互に尊重しあうことだから。
というのはその通りだと思います。
“平和憲法”のことに触れたのは、常日頃、平和憲法を持ち出して反核を唱える方々が、中国によるウイグルの核汚染、被爆の問題を無視していることの矛盾を指摘する意味も込めておりました。
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