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http://tibet.blog.shinobi.jp/Entry/85/ の つづき
札幌医科大学 高田純教授
みなさん、こんばんは。
最初に、シンポジウムの準備をしてくださいました日本ウイグル協会の方々、ありがとうございます。ご苦労様です。そしてお忙しい中、全国から本日のシンポジウム、「シルクロードにおける中国の核実験災害と日本の役割」に集まってくださいまして、ありがとうございます。お正月明けに日本ウイグル協会顧問の白石先生から私のところに電話が入って、こういったシンポジウムのお話があり、私はすぐに、やりましょうと返事をしました。
私はこのテーマを調査研究してまいりましたが、このテーマにはやはりウイグル人の参加が重要である。それで、この問題でロンドンに亡命しているアニワル医師にぜひとも東京に来ていただいて、一緒にシンポジウムをやろうということで、無理を申しまして、昨日、ロンドンよりアニワル医師に参加していただけました。本当にありがとうございました。
今日のシンポジウムには二つの歴史的な意義があるかと思います。
まず第一点、日本の役割ということですが、日本は「唯一の被曝国」ではありません。最初の核災害を受けたわけですけれども、あまりにも、「唯一の被曝国」と言い続ける人たちが多いわけです。
シルクロードの核災害、これは未曾有を核災害ですが、これに対して日本が人道的科学的な支援を行うために、情報を発信する、今日が最初の大きなシンポジウムです。中国が引き起こしたこの大規模核災害について、日本から世界に向けて情報発信するという歴史的な日です。これが第一点です。
第二点。これは先ほど頭山先生もおっしゃっていました。この問題は、対岸の火事ではありません。日本の問題です。これまで反核平和団体はやってはいけない中国の核の蛮行を黙認し、時にはこれを擁護してきましたが、もっとも中国の核武装で脅威を受けるのは、実は日本です。
4月の初めに、北朝鮮がまた日本に向けて弾道ミサイルの発射実験を行います。北朝鮮の核武装を阻止しようということで、六者協議が行われてきました。これはほぼ破綻していますが、この六者協議の議長国が中国です。私は中国には議長国になる資格はないと思います。
日本がいままでタブー視し、語らなかった中国の核問題、核兵器問題、今日は初めて核実験という形で取り上げます。日本が、この中国の核兵器問題を初めて取り上げる、大事なシンポジウムです。
この二つの歴史的な意義が、今日のシンポジウムにはある、ということをみなさんご理解していただきたいと思います。
私の調査研究は2000年8月、カザフ・中国国境調査に始まります。この調査はカザフスタンの保健省の要請で行われ、中国の核実験がカザフに与えた影響、健康影響を調べました。
カザフスタンではソ連の実験が1949年から行われています。カザフスタンの健康被害の大きな原因はソ連、ロシアの核実験です。国境の町は中国の核実験の影響も受けている。そのようにカザフスタンの保健省の科学者が我々、広島から来た科学者に説明してくれました。ぜひ調査してほしい、ということでしたが、私はそのとき、カザフの報告書を見ながら、最大の被害はウイグルが受けていると思いました。そのときから、これは公にしにくいと思って、秘密裏に単独でこの調査をしてきたわけです。
その結果、昨年7月、ちょうど北京五輪が始まる直前に、どうにか日本語の本が出版できました。これが世界で最初の中国の核実験災害に関する科学報告書となりました。
その年、去年10月に、南半球、アルゼンチンのブエノスアイレスで、私のテーマである放射線防護学の国際会議がありました。10月18日に私はブエノスアイレスに行きましたが、その前日の17日にワシントンDCに寄りました。中国の核実験の最大の被害を受けたウイグルの、世界ウイグル会議総裁であるラビア・カーディル女史とこの問題で会談するということを考えまして、国際会議に先立って、このウイグルの核実験災害の説明をしてまいりました。非常にはっきりした彼女の見解もあり、私の調査研究を喜んでいただけました。そのときに約束したのが、この問題をウイグルの人たち、そして世界の人たちに知ってもらうために、日本語の原著を英語とウイグル語に翻訳する、ということでした。日本人アメリカ人ウイグル人共同の翻訳チームが立ち上がりまして、今週月曜日、翻訳版が出版されました。
翻訳版のために、ラビア・カーディル女史から序文が送られました。ラビア・カーディル女史は、中国政府による長年の実験災害の隠蔽と、核汚染した環境を放置していることを、強く序文の中で非難しています。
お配りされた資料の中に、その序文の日本語翻訳版がありますので、後ほどご覧になってください。
さて中国の核実験災害の調査の背景ですが、私は広島大学の原爆放射線医科学研究所の博士課程におりまして、広島の調査が私の原点でした。ソ連が崩壊してから、ソ連の実験場だったカザフスタンのセミパラチンスクの実験影響、健康影響の調査を1995年から行っています。あと、チベットにも関係するんですが、核兵器に必要なプルトニウム製造工場の核廃棄物を川に投げ捨てる、という非常に非道いことがあったようです。その川沿いに暮らしている人の調査を行いました。
こういった世界の調査をしてはっきりわかる、すぐわかったことは、日本は「唯一の被曝国」ではないということです。ぜひ、今日参加されたみなさん、日本は「唯一の被曝国」ではないという認識をもっていただきたいと思います。
さて、地図を示していますが、中心部分が東トルキスタン、ウイグルの人たちの国ですね。地図の左上のほうにカザフスタン国境があります。2000年に国境の町を調査しました。
ソ連と中国の比較をして明確にわかることは、どちらも居住区での実験だったのですが、ソ連は爆発威力を抑えた実験だったということと、実験場の管理をきっちりしていたということです。
私は当初ソ連って危ないことをやっているなと思ったんですが、中国の実験と比較すると明確にわかったんですが、ソ連は四国くらいの面積のところに、鉄線を張って人が入れないようにしている。四国ぐらいのところに境界をつくるというのは大変な工事だったと思うんですが、住民が入り込まないような形で実験をしていた。それでも危険なので、最大で0.4メガトンの核爆発です。
一方中国はどうだったかというと、最大で4メガトン。すなわちソ連の10倍、長崎の核の200倍の威力で、ウイグルの人たちの証言を聞きますと、実験場の管理もなく、そういう柵もなく、人が出入りをする中で、爆発をさせていたと。日本の研究者、科学者、技術者は「安全なくして実験なし」とよく言うわけですが、とても実験とはいえないものだった、と言えるのではないでしょうか。
地表で核爆発が起きるとどういうことになるか、この絵を見ていただきたい。広島・長崎は空中爆発でした。地表で爆発すると砂が舞い上がります。砂と核物質が混合していきます。これが核の砂を形成して風に吹き飛ばされて、風下に流れて、風下に核の砂が降ってくる。それによって、遠方で核放射線影響、健康被害を受けるわけですが、科学的にその影響の度合いを計算することは可能です。
これまでのカザフスタンの調査等の経験と、計算の根本理論は米国の理論を用いています。これによってこれまでセミパラチンスクの実験、北朝鮮の核実験の日本への影響を計算しています。
今回、同じ手法で中国の核実験災害を計算しました。
シルクロードの楼蘭遺跡というのをみなさんご存じだと思うんですが、あの楼蘭遺跡の近くです。
それで、シルクロードに大量の核の砂が降りました。全46回、20メガトンの核爆発をしているのですが、私の計算ではその中の3つの主なメガトン級の危険な核爆発について計算しました。
その結果、19万人以上が急性死亡。
ということは消滅した村がいっぱいあったということです。あと、死ななかったものの、甚大な健康被害を受けた急性症を起こした人たちは129万人という数字が出ています。
これは私の科学推定ですが、ラビア・カーディルさんから伺った中国共産党の機密情報として75万人死亡説というのがある。この75万人という数字は私の推定とだいたい一致するわけです。病院に担ぎ込まれず、全然医療的なケアを受けなければ、129万人のうちかなりの人が死んだかもしれない。
今回のこの計算では3発分しか計算していません。その他のものを含めると相当な数になるだろうというのはみなさんも想像できるのではないでしょうか。
ということでこの75万人死亡説というのはかなりの信憑性があるのかな、と今思っています。
あと、危険な核汚染影響を受けた面積は、東京都の136倍以上、というとてつもなく広い地域が核の被害を受けている。そのときの被害と、核ハザードが現在継続して続いているという問題もある。
地下実験も行われています。ただし地下と言っても本当に地下かという証明はなく、ウイグルの人たちの証言を聞きますと、90年代にも地表に噴出して非常に危険な爆発をしているということです。
96年までそういうことをやっていたわけですが、あのときに日本の反核団体はフランスの実験を非難しました。ノーベル賞文学者大江健三郎氏も、フランスの実験を非難しましたが、中国のこの蛮行に対しては黙っていました。僕は、それは許されるのか、と思うわけです。
地下といっても最大1メガトンの核爆発で、現在も地下を汚染しています。地下が汚染されると、地下水が汚染され、川にしみ出してくる。周辺の人たちの健康に影響を与える。だから21世紀の現在もこの問題は続いているということなんです。
現在放置されている健康被害、これはラビア・カーディルさんのメッセージにもあったのですが、私の推定ではこの3発のメガトン級の爆発で、死産、奇形、胎児影響が35000人、基本となった人口データベースはWHOの値です。
あと白血病推定、3700人以上、甲状腺ガン13000人以上、この計算はかなりの確度があります。放射線防護学の理論はかなりの精度があります。基本の一つは広島長崎の長年の研究、その他、私が使っている基本データはビキニ水爆実験があります。そういった長年の調査データを使ってこういったものを推定しています。
さて、これは推定ですが、今日ロンドンから来ていただいたアニワル医師ら、イギリスのグループがウイグルで調査した発がん率ですね、この下の絵は10万人当たりの発がん率、実験直後から発がん率が増加していく、という結果です。実験場に近いウイグル地区とその他の中国、どちらも増加している。これはすなわち、核の砂が広範囲に降って、ウイグルの外にも核の砂が飛んでいる、すなわちチベットにも飛んでいる。ということです。これを証明したデータだと思います。
地下実験といいながら、地上に飛び出している、80年代90年代。最近でも白血病が発生しているという話を聞きますので、本当は地下ではない、とんでもない核爆発だったことを物語っています。
さて、中国の核実験災害の人道上の問題を最後にまとめたいと思います。
「これは実験ではない、犯罪行為である」ということです。人命軽視ではなく、人命を無視した核の蛮行といえるのではないでしょうか。
ウイグル民族が暮らす居住区でメガトン級の地表核爆発を強行したのです。
ウイグルの人たちの証言から、核実験災害の事実を、中国政府はずっと隠蔽してきています。その結果、死亡者および健康被害者に保障を一切していない。それが人道上の問題です。
米ソではある程度そういったことについては配慮して、被害者に対して、保障、治療をしているわけです。アメリカは相当マーシャルで行っています。一方中国は一切していないということを聞いているわけです。
次の問題。やはり中国共産党政府の責任だと言えると思います。
まず核実験災害の科学情報を中国政府は開示すべきである。
被害者への保障、環境対策、これは現中国政府に全責任がある。
もう一つ、中国政府はここを観光地化している。とんでもないわけですが、すなわち、その観光地を訪れる日本人も含めて(日本人は相当行っていると聞いています)、この現地を訪れる外国人に対する問題がある。
70年代から日本人はこのシルクロードの土地を観光しているわけですが、96年まで核実験をしながら、日本人を含めて外国人がこの地を観光している。これが国際問題でなくしてなんであるか。
現在も、96年以降行っていないとはいえ、核実験場には放射線物質が残留している。放射線衛生上の問題が21世紀の今もある。その地域および周辺の、地下水による汚染拡大が危惧されると言えます。
さて、こんなことがあっていいのでしょうか。
中国政府はシルクロードの遺跡を世界遺産に申請していると聞きます。この辺は現地の人の声も聞きたいところですが、私はこういった核ハザードの問題を放置した形で、世界遺産に登録されてはならないと思っています。
すなわち、この地のシルクロードの世界遺産申請に問題あり、と私は思いますが、会場のみなさんはどう思われますか。(拍手)
そこで日本の役割は、やはりこの問題について人道的に、科学的に取り組むことが望まれるでしょう。唯一の被曝国ではありませんが、最初に核被害を受けて、この問題に心を痛めた国民として、やはり中央アジアの、日本にもゆかりのあるこの地域を科学的に支援していくということが大事ではないかと思います。
これはウイグルだけではなく、チベットの問題でもあるのですが、あの地域一帯について科学的支援を展開していこうということで、今日、このシルクロード科学プロジェクトをみなさんの前で立ち上げて行こうと思っています。みなさん、ご賛同いただけるでしょうか。(拍手)
それでこのプロジェクトを継続的に推進するために、こういった倶楽部を立ち上げていきます。
日本シルクロード科学倶楽部。以前、日本ウイグル協会顧問の白石先生が日本シルクロード倶楽部を立ち上げていたと聞いているんですけれども、ここに科学という言葉をつけていきたいと思います。最初、シルクロード科学倶楽部としようと思ったのですが、日本から支援していこうということで、日本という名前を最初につけさせていただきました。
みなさん、この倶楽部の発足、ご賛同いただけるでしょうか。(拍手)
ご静聴まことにありがとうございました。
日本シルクロード科学倶楽部
http://www15.ocn.ne.jp/~jungata/SilkRoadJpScCb1Jp.html
http://tibet.blog.shinobi.jp/Entry/87/ に続く
他に次の2点が、高田先生の著書でお薦めのもの。
核爆発災害―そのとき何が起こるのか (中公新書 1895)
世界の放射線被曝地調査―自ら測定した渾身のレポート (ブルーバックス)
中国の核実験の実態をもっと知りたい、広めたい方は
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千葉県在住